COX-2 inhibitorは、家族性大腸腺腫症(FAP)患者の大腸ポリープ数を減少させたことから、FAP症例の癌発生抑制につながるのか注目されている。また非遺伝的な大腸ポリープ症例での治療効果や癌予防効果があるのか否かも注目されている。胃癌の領域においてもラットでの胃癌を抑制することが
Gut 2004;53:195-200に報告されており、そのメカニズムに対する様々なアプローチが行われており、O-115の演題もその1つである。
O-115:
COX-2 inhibitorを用いたスキルス胃癌転移抑制効果
天道正成ら(大阪市立大学大学院 腫瘍外科)
スキルス胃癌の進展には、癌細胞周囲の線維芽細胞が関与しているとされている。また、COX-2は、大腸腺癌において、主に間質の線維芽細胞に発現し、腫瘍の増殖進展に関与することが示唆されている。そこで今回、スキルス胃癌の浸潤転移における胃線維芽細胞の関与と、COX-2
inhibitor(JTE-522)を用いた浸潤転移抑制について検討を行なった。
in vitroでは、スキルス胃癌細胞株OCUM-2D(以下2D)、線維芽細胞株NF-11を用いた。数種の濃度のJTE-522を添加したNF-11培養上清を2Dに加え、invasion
assayにより浸潤能への影響を検討し、JTE-522を添加したNF-11培養上清中の増殖因子などの産生量をELISA法にて検討した。
in vivoの検討には、スキルス胃癌由来腹膜播種転移株OCUM-2MD3を1×107個、4週齢のヌードマウスの腹膜内に接種して腹膜播種モデルを作成し、コントロール群、S-1単独群、COX-2阻害剤(JTE-522)単独群、S-1+JTE-522投与群の4群に分け、S-1とJTE-522が生存期間に及ぼす影響を検討した。また、スキルス胃癌細胞株OCUM-2Mを1×107個、4週齢のヌードマウスの胃壁に接種してスキルス胃癌モデルを作成し、同様の経口投与を行い、腫瘍サイズ、転移リンパ節の重量を検討した。
結果、in vitroでは、NF-11培養上清は2Dの浸潤能を有意に促進させ、この促進効果はJTE-522により抑制された。JTE-522はNF-11のPGE-2産生、HGF産生を抑制し、他には影響を及ぼさなかった。in
vivoでは、S-1、JTE-522、両者併用投与群ですべて生存期間は延長した。また、腫瘍サイズ、転移リンパ節の重量とも抑制効果を認めた。 |