私は2007年12月から、徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 臓器病態治療医学分野(旧第2内科)に着任いたしました。
 これまでは、札幌医大第四内科で、消化器癌の研究(癌の転移・浸潤、抗癌剤耐性機序など)および治療を行ってきました。生まれ育った北海道を離れて四国に参りましたので、気候、習慣、食事、人の気質、言葉などがかなり異なり、少し戸惑っています。
 同様に、内視鏡検査の前処置も異なり、こちらではいわゆる「セデーションをする」ことが極端に少ないように感じます。また、多くの内視鏡医は積極的にセデーションすることに抵抗があるように思います。以前より「西日本ではセデーションをしない」ということを聞いていましたが、実際にこちらに赴任し、このことを強く感じました。
 私自身、内視鏡を飲むのが下手であり、いつもジアゼパム1A(あるいは、これにオピスタン1A追加)を静注して検査を受けていましたので、私の担当する患者さんにも同様にセデーションをしてきました。特に、癌の患者さんは、癌であるという精神的ショックや治療のストレスなどがありますし、また、効果判定のために何度も検査を受けなければなりません。ですから、少しでも楽に検査を行うべきであると考えています。

 私がこちらに来てもう一つ感じたことは、モルヒネの使用量が少ないということでした。全国データからも、徳島県におけるモルヒネの使用量が最も少ないことが示されています。やはり癌の患者さんには、できる限り痛みや苦痛を除いた上で抗癌剤治療を行いたいと思います。私の母も卵巣癌で約3年前に他界しましたが、その際は、モルヒネ、消炎鎮痛剤、マイナートランキライザー、ステロイドなどを上手に使い、QOLを少しでも高めることに努めました。このことは治療を継続する上で非常に大切であり、また、治療意欲を高めるという点でも重要であることを実感しました。さらに、抗癌剤治療により腫瘍が縮小し、圧迫症状などが消失して苦痛が除かれることもしばしばあることは周知の事実であり、いわゆる緩和治療と抗癌剤治療の両者を行うことの重要性を、家族の癌治療を通じて痛感しました。
 現在、私が所属する教室は、これまで化学療法をあまり積極的に行っていませんでしたが、これからは苦痛の無い癌治療を目指して、積極的に行っていきたいと考えております。



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