論文紹介 | 監修:財団法人癌研究会附属病院 藤田力也(消化器内科・部長/内視鏡部・部長)山口俊晴(消化器外科・部長)

8月

stage II/III大腸癌の術後補助化学療法としてのLV/5-FU療法の月2回投与法と月1回投与法, および治療期間24週群と36週群の無作為化比較試験

Thierry André, et al., J Clin Oncol 21(15), 2003:2896-2903

 leucovorin(LV)+5-FU療法はstage IIIの大腸癌に対する標準的な術後補助療法として施行されているが、投与スケジュールや治療期間は標準化されていない。また、stageIII大腸癌に対するLV/5-FU療法の効果の研究結果は一致していない。
 著者らは, Dukes'B2すなわち漿膜下層以深に浸潤したstage II症例43%、stage III症例57%からなる合計905例に対し術後補助療法の治療法と治療期間に関する2×2無作為化比較試験を行った。治療法は、LVFU2療法(dl-LV 200mg/m2あるいはl-LV 100mg/m2を2時間で点滴後、5-FU 400mg/m2をbolusで投与、その後5-FU 600mg/m2を22時間かけて点滴静注する2日間の治療を14日毎に月2回行う方法)と、FULV療法(dl-LV 200mg/m2あるいはl-LV 100mg/m2を15分間で静注後, 5-FU 400mg/m2を15分間で静注する治療を28日毎に月1回5日間連続で行う方法)の2群とした。治療期間は各群24週または36週とした。
 その結果、中央値41カ月の追跡で、無病生存率はLVFU2療法とFULV療法の2つの治療法、24週と36週の治療期間による差はなかった。総死亡数はLVFU2療法で73例, FULV療法で59例とLVFU2療法で若干多かったが、統計的に有意ではなかった。最も高頻度に観察されたgrade 3/4の副作用は好中球減少・下痢・口内炎であった。全副作用はLVFU2群で有意に低率であった。
 これらの成績からLVFU2療法はFULV療法よりも副作用が少ないことが示された。無病生存率と生存率に関しては、治療法および治療期間による統計的な有意差はなかった。

考察

術後補助化学療法は副作用発生率が重要な評価項目

 5-FU+leucovorin(LV)療法は大腸癌治癒切除後の標準的な補助化学療法であるが、5-FUおよびLVの投与法や治療期間は標準化されていない。
 今回の研究で行った月2回投与法や月1回投与法の他に、週1回, l-LV 250mg/m2を2時間かけて点滴静注する間に5-FU 600mg/m2をbolusで静注するのを6週投与2週休薬して1コースとする治療法も広く行われている。術後補助化学療法においては、個々の患者において奏効したか否かは評価できないため、副作用発生率は重要な評価項目である。本研究の月2回法と月1回法との比較で、無病生存率や生存率は差がなかったが、副作用は月2回法で少なく、全体として月2回法が優ることが示唆された。
 今後は、前述した週1回投与, 6週投与2週休薬法との比較も必要と考えられる。

(消化器外科・大矢雅敏)

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