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消化器癌治療の広場 2007年を振り返って

2007年を振り返って/佐藤温

  2007年は特に胃癌化学療法領域において飛躍的な進歩のある1年であった。新年1月19日から21日に米国オ−ランドで行われた米国臨床腫瘍学会共催消化器癌シンポジウム(ASCO-GI)におけるACTS-GCの報告がその幕開けとなった。

  Stage II、IIIの胃癌治癒切除症例1,059例を対象に、手術単独群と手術後TS-1(ティーエスワンR)の1年間服用群に無作為化比較した結果、TS-1投与群で死亡リスクの減少が証明された。この結果より、今後はstage II、III胃癌治癒切除症例に対して、TS-1補助化学療法が標準治療法と位置づけられた。2007年6月1から5日に米国シカゴで行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)においては、切除不能再発胃癌に対する標準治療を決定するための臨床第V相試験、JCOG9912試験およびSPIRITS試験結果報告が行われた。
  JCOG9912試験は切除不能再発進行胃癌に対するTS-1単独あるいはCPT-11/CDDP併用化学療法の延命効果の検証を目的とした試験である。5-FU単独治療を対照として、CPT-11/CDDP併用療法(Toxic New)の優越性、TS-1単独療法(Less Toxic New)の非劣性を検証した結果、CPT-11/CDDP併用療法は全生存期間において優越性を証明することはできなかったが、TS-1の5-FU単独に対する非劣性が証明された。毒性の発現も極めて低率であり、非入院生存期間も有意に優れていた。これより、TS-1単独治療が切除不能進行再発胃癌に対する標準治療であり、今後の第V相試験のreference armとなった。さらにそのreference armとなったTS-1単独治療を対照とした、TS-1/CDDP併用療法の優越性を検証したSPIRITS試験からは、全生存期間におけるその優越性が証明され、TS-1/CDDP併用療法が標準治療として位置づけられた。いずれの試験も、これからのがん医療を前進させた事は確実である。
  ところで、化学療法を学び始めたばかりの医療者らはこれらの結果をどう受け入れているのだろうか。ASCO以後、多くの紙面等ではその内容をさらに冷静に分析し、そして科学的に論評している。ただ、私個人としては感情的にも大きく揺るがされるものがある。私と胃癌患者らとの抗癌剤治療の歴史はすでに20年近くになる。ご存知のように一昔前は抗がん剤の効果は期待できるものではなかった。
  しかし、その時代にも多くの胃癌患者らが現実に果敢に治療に臨んでいったのである。今年の試験結果はその歴史があってこそ生まれ得たものなのである。多数の医療に携わる人たちの努力の積み重ねなのである。そして、必死に生き抜いた患者らの強い思いの結実なのである。
  研究成果は単なる知識としてだけに止めておいてはいけない。患者に知識をひけらかすだけでは医療ではない。成果は、これまでのがん医療の歴史に関わってきた医療者や患者らに敬意をもって受け入れ、がん患者らにその恩恵を返さなければならない。実臨床現場で治療が滞りなく行われることをまず望んでいる。そして、これまでの歴史を踏襲して、患者自身に目を向けた医療が展開されていくことを望んで止まない。
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