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消化器癌治療の広場 2007年を振り返って

2007年を振り返って/大村健二

  新しい世紀に入って7年が過ぎようとしている。その間、臨床の現場における消化器癌の化学療法に対する認識は大きく変化したと思う。国内外で施行された大規模な無作為化比較試験(RCT)の結果がもたらすエビデンスを重視する姿勢が明白に定着した。それに伴い、臨床第I相試験を施行していない個性的なレジメンを極少数の症例に用い、有効であったと述べる報告はほとんどなくなった。医療先進国としては少々遅きに失した感もあるが、これらは理性的で好ましい現象といえる。

  そのような流れのなかで、おそらく2007年はわが国の消化器癌化学療法にとって後世に語り継がれる年になると考える。長い間欧米の後塵を拝していたRCTにおいて、わが国発の質の高い報告が相次いだのである。医療と教育の双方で高い水準を維持するわが国で、なぜこれまで癌化学療法のRCTが遅々として進行しなかったのであろうか。その理由の詮索はさておき、年の瀬を迎えるにあたって心底よりその成果を喜びたい。

  2007年1月、ASCO GIでACTS-GCの結果が報告された。stage II、III胃癌の術後補助化学療法におけるTS-1の有用性が証明された意義は大変大きい。今後は、standard armとして認められたTS-1を標準治療とし、それを凌駕するレジメンが模索されることになる。

  2007年6月のASCOでは、JCOG9912とSPIRITSの進行・再発胃癌を対象とした二つのRCTの結果が報告された。前者ではTS-1の5-FUに対する非劣性が証明され、後者ではTS-1単剤に対するTS-1/CDDPの優越性が証明された。いずれのRCTも、進行・再発胃癌の化学療法の歴史に大きな足跡を残すことは確実である。今後は、進行・再発胃癌を対象としてCPT-11/CDDPやLV/5-FUベースのレジメンなど静脈投与のレジメンを比較するRCTの施行が求められる。

  これら3つのRCTがもたらした成果は極めて大きな意義を持つ。診断技術と手術療法の双方で他国の追随を許していないわが国の胃癌診療が、化学療法でも世界をリードする立場になったといえる。

  消化器癌に対する抗体製剤の先陣をきって、アバスチンが承認、薬価収載された。大腸癌の化学療法の成績はFOLFIRIとFOLFOXによって大きく向上したものの、ここ1〜2年は伸び悩んでいる感が否めない。したがって、これらに上乗せする抗体製剤の効果に期待する声は決して小さくない。しかし、この極めて高価な薬剤が、これまでほとんど論じられなかった癌治療の医療経済学的議論に火をつけようとしている。限られた医療費をどのように配分すれば国民の健康を効率よく増進することができるのか。政府が医療費の削減の方針を変えない限り、医療従事者はこの問題から目を逸らすわけにはいかない。
  このように、消化器癌化学療法に多くの成果をもたらすとともに、課題をも提起した2007年であった。
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