Abstract #3
KEYNOTE-012試験:抗PD-1モノクローナル抗体薬Pembrolizumab (MK-3475) による治療を受けた進行胃癌患者におけるPD-L1発現と臨床転帰の関連
Relationship Between PD-L1 Expression and Clinical Outcomes in Patients with Advanced Gastric Cancer Treated with the Anti-PD-1 Monoclonal Antibody Pembrolizumab (MK-3475) in KEYNOTE-012
Kei Muro, et al.
抗PD-1抗体薬の可能性。第II相試験へ期待が膨らむ
ESMO2014で公表された胃癌に対する抗PD-1抗体薬Pembrolizumab (MK-3475) の第Ib試験のアップデートである。観察期間中央値は、
ESMO2014での6ヵ月に対して今回は8.8ヵ月のデータであるが、観察期間が延長しても治療関連有害事象は増加せず、新たな毒性も観察されていない。また、OS中央値は未到達で6ヵ月OSが69%という数字は、第Ib試験とはいえ、2nd-line以降の症例を67%含む胃癌の成績とは思えない良好な成績である。何度見ても、waterfall plot
(図2)、swimmer plot
(図3)、spaghetti plot
(図4)すべてから、本剤のそこはかとない可能性を感じる。
本試験は、免疫染色によるPD-L1タンパク発現陽性例を対象としている。PD-L1はPD-1のリガンドであり、腫瘍細胞のみならず間質にも発現を認め、本試験のPD-L1タンパク発現陽性は「間質または1%以上の腫瘍細胞に発現」と定義されている。現時点では、PD-L1高発現と奏効率、PFS、OSとの関連性に関して、室先生は「weak association」と述べられた。
PD-L1発現が抗PD-1抗体薬の効果予測因子になるか否かは、必ずしも一致していない。最近Nature誌に、腫瘍細胞にPD-L1が高発現した患者、特にPD-L1が間質の腫瘍浸潤性免疫細胞で発現例に対して、抗PD-L1抗体薬 (MPDL3280A) の治療効果が観察されることが報告された
1)。「間質
または1%以上の腫瘍細胞に発現」から「間質
および1%以上の腫瘍細胞に発現」症例とした際のPembrolizumabの効果はどうなのであろうか? ――免疫染色を陽性とするカットオフの設定も含め、計画中の第II相KEYNOTE-059試験
2)の結果を待ちたい。
最後になるが、Rituximabを開発され“The Antibody Hero”と称されるRonald Levy先生のKeynote lectureの直後という大舞台で、堂々と発表された室先生に大きな拍手を送りたい。
背景と目的
PD-1は活性化T細胞表面に発現している抑制性の共刺激受容体であり、リガンドであるPD-L1、PD-L2と結合することで、エフェクターT細胞の機能を阻害する3)。また、腫瘍細胞やマクロファージ表面におけるPD-L1発現により、免疫監視を抑制され腫瘍の増殖が促進される4)。
Pembrolizumab (MK-3475) は、PD-L1とPD-L2を二重に遮断するヒト型IgG4抗PD-1抗体薬であり、様々な癌腫に対して臨床的な活性を示している。近年、IpilimumabやBRAF阻害剤使用後に増悪した切除不能メラノーマに対する治療薬として、米国で承認された。
KEYNOTE-012試験は、PD-L1陽性固形癌に対するPembrolizumabの第Ib相コホート試験であり、今回は胃癌コホートにおけるアップデートおよびPD-L1発現に関する解析が行われた。
対象と方法
対象はECOG PS 0/1で、PD-L1陽性の再発または転移を有する胃・胃食道接合部腺癌患者であり、Pembrolizumab (10mg/kg、2週毎) を静脈内投与して8週毎にRECIST ver. 1.1による効果判定を行った (図1)。なお、PD-L1発現を評価した162 例中65例 (40%) がPD-L1陽性であった。
結果
胃癌コホートには、アジア人19例、非アジア人20例の計39例が登録された。年齢中央値は63.0歳、男性が71.8%であり、胃切除術を受けていた症例は51.3%、化学療法歴は1レジメン以下が23.1%、2レジメン以上が66.7%であった。
2014年11月10日時点において、治療関連有害事象は26例 (66.7%) に認められ (表1)、grade 3-5は4例 (食欲減退、倦怠感、低酸素症、末梢神経障害、肺臓炎)、治療関連死は1例 (低酸素症) に認められた。
追跡期間中央値8.8ヵ月における中央判定での抗腫瘍効果は、CR例は認めなかったもののPRが8例、SDが5例で得られ、奏効率は22.2%であった (表2)。
また、中央判定を行った32例における、腫瘍径のベースラインからの最大変化率のwaterfall plotは図2のとおりで、53.1% (17例) で標的病変の縮小を認めた。
奏効までの期間中央値は8週で、奏効例8例中6例が解析時にも奏効を維持しており、奏効期間中央値は24週であった (図3)。なお、腫瘍サイズのベースラインからの経時的変化の検討では、奏効は長期にわたることが確認された (図4)。
PFS中央値は1.9ヵ月、6ヵ月 PFSは24%であり、OS中央値は未到達、6ヵ月OSは69%であった (図5)。また、PD-L1の発現レベルが高い症例ほどアウトカムの改善が良好な傾向が認められた。
PD-L1発現とPembrolizumabの有効性の関連性を検討したところ、有意差はないもののPD-L1高発現と奏効率、PFS、OSとが関連する傾向がみられた (表3)。
結論
PD-L1陽性胃癌患者におけるPembrolizumabの安全性および忍容性プロファイルは許容されるものであった。また、持続的な抗腫瘍効果が得られ、奏効率は治療医判定33.3%、中央判定22.2%であった。なお、PD-L1高発現例で治療効果が改善する傾向がみられた。
これらの知見はさらなる検討を支持するものであり、2015年の第一四半期には、Pembrolizumab単剤療法および5-FU + CDDP + Pembrolizumab併用療法を検討する第II相試験 (KEYNOTE-059) 2)が開始される予定である。