2011年 消化器癌シンポジウム Cancers Symposium 消化器癌治療の広場

2011年 消化器癌シンポジウム

演題レポート Presentations

Abstract #398
切除不能な大腸癌患者における早期の腫瘍縮小が長期的な予後に与えるインパクト: OPUS試験の追加解析より

Impact of early tumor shrinkage on long-term outcome in metastatic colorectal cancer (mCRC) treated with FOLFOX4 with or without cetuximab: lessons from the OPUS trial.

Hubert Piessevaux, et al.

一次治療としてCetuximab併用化学療法を施行されたKRAS 野生型症例では、
早期の腫瘍縮小が長期的な予後の改善につながる

橋 孝夫 先生

 切除不能進行再発大腸癌患者における一次治療としてFOLFIRIにCetuximabを併用した場合、早期の腫瘍縮小と生存期間は有意に相関することがCRYSTAL試験の追加解析により報告されている1)。本報告では、OPUS試験データをレトロスペクティブに解析し、FOLFOX4にCetuximabを併用した場合においても、早期の腫瘍縮小によって長期的な予後を予測できるかどうかが検証された。KRAS 野生型患者において、FOLFOX4群で41例 (46%)、FOLFOX4 + Cetuximab群では54例 (69%) に早期の腫瘍縮小が認められた。KRAS 野生型で早期の腫瘍縮小効果が認められた症例のうち、FOLFOX4 + Cetuximab群では、無増悪生存期間 (progression-free survival: PFS) および全生存期間 (overall survival: OS) に有意な改善が認められたが、FOLFOX4群ではPFSおよびOSに差はみられなかった。
 早期に腫瘍縮小効果を認めた症例はレジメンがFOLFOX単独にせよ、一般的にはPFSを延長させるのではないかと思うが、なぜCetuximab群のみが有意にPFSとOSを延長させたのか、私には理由がよくわからない。しかしながら、CRYSTAL試験の追加解析でも同様の結果が得られたことから、KRAS 野生型患者においては、FOLFIRIあるいはFOLFOXレジメンに関係なく、Cetuximabを併用した場合の早期の腫瘍縮小が長期的な予後の改善につながることが示唆された。
 一次治療としてFOLFOXあるいはFOLFIRI + Cetuximabを施行されたKRAS 野生型患者においては、早期の腫瘍縮小が生存期間の延長を反映したため、今後はどのような症例がCetuximab併用群で早期の腫瘍縮小が図れるのか、KRAS 遺伝子以外の分子マーカーが明らかになると有益であると思われる。

 
背景と目的

 切除不能な大腸癌患者における一次治療としてIrinotecanベースの化学療法にCetuximabを併用した場合、早期の腫瘍縮小と生存期間は有意に相関することがCRYSTAL試験の追加解析により報告されている1)
 本報告では、OPUS試験データをレトロスペクティブに解析し、FOLFOX4にCetuximabを併用した場合においても、早期の腫瘍縮小 (8週以内に20%以上の腫瘍縮小) によって長期的な予後を予測できるかどうかを検証した。

対象と方法

 OPUS試験は多施設共同オープンラベル無作為化比較第II相試験である。EGFR陽性の転移を有する大腸癌患者を対象とし、FOLFOX4群とFOLFOX4 + Cetuximab群に無作為に割り付けた。
 今回の追加解析では、登録症例のうち、KRAS 遺伝子検査および8週時点での画像診断が可能であった297例を対象とした。ベースラインからの腫瘍サイズの変化は標的病変の長径和により算出し、investigatorによる報告および独立評価委員会によるレビューによって評価された。

結果

 KRAS 野生型患者において、FOLFOX4群で41例 (46%)、FOLFOX4 + Cetuximab群では54例 (69%) に早期の腫瘍縮小が認められた。
 KRAS 野生型で早期の腫瘍縮小が認められた症例のうち、FOLFOX4 + Cetuximab群では、PFSおよびOSに有意な改善が認められたが (p<0.0001、p=0.002)、FOLFOX4群ではPFSおよびOSに差はみられなかった (p= 0.78、p=0.42) (表)

表 早期の腫瘍縮小の有無による生存期間の比較 (KRAS野生型)

 一方、KRAS 変異型患者においては、早期の腫瘍縮小が認められた症例では、FOLFOX4 + Cetuximab群におけるPFSの有意な改善が得られたが (HR=0.45, 95% CI: 0.26-0.79)、OSでは有意差はみられなかった (HR=0.73, 95% CI: 0.43-1.23)。

結論

 1st-lineとしてFOLFOX4 + Cetuximabを施行されたKRAS 野生型患者においては、早期の腫瘍縮小が生存期間の延長を反映した。CRYSTAL試験の追加解析でも同様の結果が得られたことから、KRAS 野生型患者においては、ベースレジメンに関係なく、Cetuximabを併用した場合の早期の腫瘍縮小が長期的な予後の改善につながることが示唆された。

Reference
1) Piessevaux H, et al.: Ann Oncol. 21 (s8): 596P