TAS-102はTrifluridine (FTD) とTipiracil Hydrochloride (TPI) を配合した経口のヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤である。FTDは直接DNAに取り込まれ、抗腫瘍効果を発揮するが、経口投与すると代謝により血中濃度が維持されないため、FTDの代謝酵素であるチミジンホスホリラーゼを阻害するTPI が配合されている。
RECOURSE試験は、3rd-line以降の切除不能進行・再発大腸癌患者を対象としてTAS-102の有効性を検証した国際共同第III相試験である。
2012年6月〜2013年10月にかけて、13カ国、114施設が参加して800例を目標として患者登録が行われた。対象は2種類以上の標準化学療法[フッ化ピリミジン系製剤、Irinotecan (CPT-11)、Oxaliplatin (L-OHP)、Bevacizumab、抗EGFR抗体薬]による治療歴があり、ECOG PS 0/1の切除不能進行・再発大腸癌患者とし、TAS-102 (35mg/m2/b.i.d, day 1-5, 8-12, 4週毎) + BSC (best supportive care) を行う群 (TAS-102群) とプラセボ + BSCを行う群 (プラセボ群) に2:1に無作為に割り付けられた。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、安全性、忍容性、TTF (time to treatment failure)、奏効率、病勢コントロール率、DoR (deepness of response)、KRAS サブグループ解析であった。
TAS-102群 (534例) とプラセボ群 (266例) の間に患者背景の偏りはなく、平均年齢は63.0歳、日本人が約3分の1、西洋人が約3分の2で、
KRAS 変異型が約半数を占めた。追跡期間中央値は8.3ヵ月であった。
主要評価項目であるOSの中央値は、TAS-102群7.1ヵ月、プラセボ群5.3ヵ月であり、TAS-102群で有意な延長を認めた (HR=0.68, 95% CI: 0.58-0.81, p<0.0001)
(図1)。サブグループ解析ではいずれにおいてもTAS-102群で良好であり
(図2)
、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果、効果予測因子は同定されず、転移の初回診断からの期間、ECOG PS、転移個数は予後因子であった。なお、約4割は本試験の後治療として全身化学療法を受けていたが、両群間の後治療に偏りはなかった。
図1
図2
PFSの中央値は、TAS-102群2.0ヵ月、プラセボ群1.7ヵ月とTAS-102群で有意に延長し (HR=0.48, 95% CI: 0.41-0.57, p<0.0001)
(図3)、すべてのサブグループで一貫してTAS-102群が良好であった
(図4)。また、ECOG PS が2以上に悪化するまでの期間を検討したところ、中央値はTAS-102群5.7ヵ月、プラセボ群4.0ヵ月であり、TAS-102群で有意な延長を認めた (HR=0.66, 95% CI: 0.56-0.78, p<0.0001)。
図3
図4
TAS-102は忍容性が良好であり、比較的頻度の高い有害事象は消化器毒性 (悪心、食欲不振、下痢、嘔吐など)
(表1) と血液毒性であり
(表2)、発熱性好中球減少症は3.8%であった。なお、虚血性心イベントは0.4%、血栓塞栓性イベントは3.9%にみられ、重篤な有害事象の頻度はTAS-102群が29.6%、プラセボ群が33.6%であった。
表1
表2
標準治療に不応または不耐となった切除不能進行・再発大腸癌患者に対するTAS-102の投与は忍容性が良好であり、プラセボと比較してOSおよびPFSを有意に改善することが示された。