ESMO 2014 演題レポート
2014年9月26日〜9月30日にスペイン・マドリッドにて開催された ESMO 2014 Congressより、大腸癌や胃癌などの注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載しています。
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大腸癌

Abstract #547P

FOLFOX4 ± Panitumumabによる1st-lineにおいてベースライン時の年齢が有効性と安全性に及ぼす影響
Impact of Baseline Age on Efficacy and Safety of First-line Panitumumab + FOLFOX4 vs. FOLFOX4 Treatment
Jean-Yves Douillard, et al.
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Expert's view

症例数が少ない75歳超における解析が進むことが望まれる

篠崎 英司 先生

がん研有明病院
消化器内科・
化学療法科

 本研究は、切除不能進行・再発大腸癌に対する1st-lineのFOLFOX4へのPanitumumabの上乗せ効果を検証したPRIME試験で、RAS 野生型において、年齢が有効性と安全性に及ぼす影響を検討した探索的解析である。年齢は65歳未満、65歳以上75歳以下、65歳以上、75歳超の4つのサブグループに分けて検討され、結論として75歳以下の高齢患者において有効かつ忍容可能としているが、我々がもっとも興味のある75歳以上の有効性は症例数が少なく今回の報告では結論がpendingされている。毒性に関してはSAE (Serious Adverse Event) のみの検討であり、皮膚障害や血液毒性へのコメントはなかった。今回はPanitumumab併用群でSAEおよび治療関連SAEが年齢とともに増加する傾向があり、下痢が最も多い治療関連SAEであった。個人的にはEGFR標的治療という観点から、原発部位、組織型やマイクロサテライト不安定性 (MSI) statusなど年齢との相関が予想される対象の生物学的背景に興味があり、またintensiveな併用治療としてFOLFOX4のdose intensityが高齢者でも維持できたのかが知りたいところであった。75歳を超える高齢者においては臨床試験ベースでは登録が少ない事が多く、複数の試験でのメタ解析が必要だと思われる。
背景と目的

 大腸癌患者における年齢は上がっているものの1)、臨床試験では高齢者は対象から除外されることが多く、エビデンスに基づく有効性や安全性の評価が十分ではない。一方、これまでに報告された高齢者を対象とした後ろ向きの解析や臨床試験では若年患者と同様の治療ベネフィットが得られることが示唆されている2-6)
 今回、切除不能進行・再発大腸癌患者に対する1st-lineとしてのFOLFOX4 ± Panitumumabを検討したPRIME試験7)におけるRAS 野生型のデータを用い、ベースライン時の年齢別の有効性と安全性を評価する探索的解析を実施した。
対象と方法

 PRIME試験の対象は、ECOG PS 0-2で主要臓器機能を有し、評価可能病変を有する未治療切除不能進行・再発大腸癌患者であり、FOLFOX4 + Panitumumab (6.0mg/kg, 2週毎) を投与する群 (Panitumumab群) とFOLFOX4を投与する群 (FOLFOX4群) に1:1で無作為に割り付けた8)
 本探索的解析はPRIME試験において80%以上の症例にOSイベントが生じた段階で実施され、RAS 野生型のみが対象となった。有効性および安全性に関する解析は、ベースライン時の年齢により65歳未満、65歳以上75歳以下、65歳以上、75歳超の4つのサブグループに分け検討された。なお、有効性の評価項目は、奏効率、PFS、OSであった。
結果

 RAS 野生型505例が対象となり、年齢中央値61歳で、65歳未満が60%を占めた。Panitumumab群253例 (65歳未満158例、65歳以上75歳以下79例、65歳以上95例、75歳超16例)、FOLFOX4群252例 (各158例、76例、94例、18例) であり、患者背景は各サブグループいずれもバランスが取れていた。
 奏効については494例が評価可能であり、奏効率は、症例数の少ない75歳超を除きPanitumumab群がFOLFOX4群に比べ良好であった (表1)
表1
表1
 PFSは、65歳未満でPanitumumab群がFOLFOX4群に比べ有意に良好であり、65歳以上、および65歳以上75歳以下では、良好な傾向がみられた (図 A)。OSでも同様の傾向を示し、65歳未満ではPanitumumab群が有意に良好であった (図 B)。なお、症例数の限られた75歳超では、PFS、OSともにFOLFOX4群で良好な傾向がみられた。
図
 安全性上、新たに問題となる事象は、いずれのサブグループにおいても認められなかった。重篤もしくは治療関連の重篤な有害事象は、特にPanitumumab群において年齢の上昇とともに増加する傾向がみられた (表2)。頻度の高かった重篤もしくは治療関連の重篤な有害事象は、Panitumumab群が下痢、FOLFOX4群が嘔吐であったが、年齢による発現率の差は認められなかった。
表2
表2
結論

 PRIME試験の探索的解析の結果、RAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌患者に対するFOLFOX4 + Panitumumabは75歳以下の高齢患者においても有効かつ忍容可能であることが明らかとなった。なお、75歳超については今後さらなるデータ集積を行い評価する必要があると考えられる。
1) Kordatou Z, et al.: Ther Adv Med Oncol. 6(3): 128-140, 2014 [PubMed
2) Cassidy J, et al.: J Cancer Res Clin Oncol. 136(5): 737-743, 2010 [PubMed
3) Jehn CF, et al.: Br J Cancer. 106(2): 274-278, 2012 [PubMed
4) Folprecht G, et al.: J Clin Oncol. 26(9): 1443-1451, 2008 [PubMed
5) Hung A, et al.: Oncologist. 18(1): 54-63, 2013 [PubMed
6) Leo S, et al.: J Gastrointest Cancer. 44(1): 22-32, 2013 [PubMed
7) Douillard JY, et al.: N Engl J Med. 369(11): 1023-1034, 2013 [PubMed
8) Douillard JY, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4697-4705, 2010 [PubMed
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