The European Cancer Congress 2013 - ESMO
SOFT試験は、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineにおけるFOLFOX + Bevacizumab (Bev) に対するS-1 + L-OHP (SOX) + Bevの非劣性を検証した、本邦初の第III相試験である。SOX + BevはFOLFOX + Bevに対して、中心静脈ポートの造設や、インフュージョンポンプの管理、指導が不要であること、通院間隔が3週毎でよいことなど、患者、医療者にとって多くのメリットがあり、Capecitabine + L-OHP (CapeOX) + Bevに対しては手足症候群が少ないというメリットがある。
主要評価項目であるbaseline PDまでのPFS (progression-free survival)、副次評価項目であるRECIST基準に基づくPFS、奏効率については 本年の米国臨床腫瘍学会において報告され、いずれもSOX + BevがFOLFOX + Bevに対して非劣性であることが示された。
今回は、個々の症例の腫瘍縮小割合を示したwaterfall plotについての報告である。近年、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineにおいて治療早期の深い腫瘍縮小が良好な予後に関連することを示唆する報告があり、PR以上の割合を示した奏効率とは別に、個々の症例における腫瘍縮小の深さが注目されている。そして、今回報告されたwaterfall plotにおいて、PFS、奏効率だけでなく、個々の症例における腫瘍縮小効果においてもSOX + BevがFOLFOX + Bevに対して非劣性であることが示された。SOX + Bevの抗腫瘍効果がまた1つ担保された形であり、SOX + Bevには上記のように多くのメリットがあること、それを支持するエビデンスが日本から発信されたものであり本邦における臨床の現場にすぐに外挿可能であることから、今後、切除不能進行・再発大腸癌治療に対する有力な選択肢として定着していくものと考えられる。
個人的にはS-1のもつDPD阻害作用が抗腫瘍効果にどのように影響するかに興味があり、今後報告されるであろうOS (overall survival) やバイオマーカー検索などに注目したい。
切除不能進行・再発大腸癌に対するS-1 + L-OHP (SOX) は、日本の第II相試験1) および韓国の第III相試験2) において有望な有効性と安全性が示され、現在の標準治療であるmFOLFOX6に代わる可能性が示唆されている。また、SOXは進行胃癌に対する1st-lineとして、標準治療であるS-1 + CDDPに対してPFSの非劣性を示している3)。SOFT試験は、切除不能進行・再発大腸癌患者に対する1st-lineにおけるSOX + BevのmFOLFOX6 + Bevに対する非劣性を検証する無作為化第III相試験である。
対象は20〜80歳でECOG PS 0/1、化学療法および放射線療法歴のない切除不能進行・再発大腸癌患者であり、mFOLFOX6 + Bev群とSOX + Bev群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、病勢コントロール率、TTP (time to progression)、TTF (time to treatment failure)、R0切除率、有害事象であった。増悪 (PD) の判断は、ベースライン時と比較して長径和が20%以上増大したものとし (baseline PD)、参考としてRECIST基準に基づくPD診断も行った。なお、PFS中央値の期待値を両群ともに10.0ヵ月、非劣性マージンはHR=1.33とし、HRの95% CI上限値が1.33未満の場合に非劣性と判定することとした。
2009年2月1日〜2011年3月31日までに82施設から512例が登録され、mFOLFOX6 + Bev群256例、SOX + Bev群256例に割り付けられた。なお、mFOLFOX6 + Bev群は1例が登録後に不適格と判断されたため、255例が解析された。また、安全性の解析はそれぞれ249例、250例で可能であった。患者背景は両群間でバランスがとれていた。
観察期間中央値18.4ヵ月におけるPFSは既報の通り、mFOLFOX6 + Bev群11.5ヵ月、SOX + Bev群11.7ヵ月であり、非劣性が示された (HR=1.043, 95% CI: 0.860-1.266) (図: 既報)。また、OS中央値 (MST) は、mFOLFOX6 + Bev群30.9ヵ月、SOX + Bev群29.6ヵ月 (HR=1.052) (図: 既報)、TTFはそれぞれ6.7ヵ月、6.2ヵ月 (HR=1.053) であった (表)。なお、事前に規定されたサブグループ解析では、全ての因子について両群間にPFSの差はみられなかった (図1)。
腫瘍縮小効果は、CRがmFOLFOX6 + Bev群7例、SOX + Bev群4例であり、奏効率はそれぞれ62.7%、61.5% (p=0.8026)、病勢コントロール率はともに89.3%であった (p=0.9872)。
Waterfall plot解析では、標的病変の奏効率は治療開始8週時点でmFOLFOX6 + Bev群42.9%、SOX + Bev群40.3% (χ2検定: p=0.5669)、16週時点でそれぞれ63.5%、58.8% (χ2検定: p=0.3245)、最大奏効時点でそれぞれ71.7%、72.3% (χ2検定: p=0.8944) であった (図2)。また、R0切除率はmFOLFOX6 + Bev群8.6%、SOX + Bev群9.4%であった (p=0.7678)。
有害事象については、SOX + Bev群の忍容性は良好であり、mFOLFOX6 + Bev群と類似していた (表: 既報)。Grade 3以上の有害事象は、mFOLFOX6 + Bev群は好中球減少33.7%、感覚神経障害14.1%、白血球減少8.4%の順に多く、SOX + Bev群では感覚神経障害10.0%、下痢9.2%、好中球減少8.8%の順に多かった。
切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineとしてSOX + BevはmFOLFOX6 + Bevに対してPFSで非劣性を示し、有害事象は忍容できるものだった。S-1が経口薬であるため、SOX + Bevはインフュージョンポンプを使った持続静注の必要がなく、3週毎の通院でよいなど、患者、医療者ともに利便性が高い。
Waterfall plot解析の結果は、既報を支持するものであり、SOX + Bevは切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineにおけるmFLOFOX6 + Bevに代わり得る。