(写真は共同研究者のD. Marino氏)
肝限局転移では切除後に残肝機能が保たれれば切除の適応と考えられる。個々の転移が大きく数が限られている場合は、転移が縮小することで切除可能となる可能性が高いので、縮小を狙った術前化学療法が有効と考えられる。本試験 (METAPAN) のポイントは2点、対象となる肝転移の規程と、化学療法レジメンの選択である。
本試験の対象となる肝転移は、3個より多くて腫瘍占拠率50%以上、対側の楔状切除を伴う肝葉切除を要する肝転移、または切除すると隣接する2区域を残せない、十分な血流や胆管ドレナージを維持できない肝転移であり、肝切除を念頭において、多数の小さな転移ではなく切除の対象になりやすい大きな転移が多く含まれるように設定されている。化学療法レジメンは3週に1回の通院でよいPanitumumab + XELOXであり、Panitumumabも9mg/kgを3週間に1回投与である。
本試験でKRAS 野生型は35例であり、かなり進行した肝転移でありながら、評価可能32例中奏効率65.7%、15例が切除可能となり (10例は1回目の評価)、EW (-) 手術は10例、OS (overall survival) 中央値は30.1ヵ月であった。このようにPanitumumabの術前化学療法への期待が膨らむ結果だが、有害事象として下痢が25例にあり、そのうち10例がgrade 3以上だったという問題点も残っている。XELOXとPanitumumab (9mg/kg) を3週間に1回投与としたことが原因なのかは不明だが、今後肝転移術前化学療法を考える際の基準や、より有害事象の少ない用法用量や組み合わせを考える必要性など、次につながる試験として評価したい。
標準化学療法 + 抗EGFR抗体薬による術前化学療法は、切除可能または潜在的に切除可能な肝転移を有する大腸癌において、予後改善に繋がることが報告されている1, 2)。そこで、切除不能進行・再発大腸癌の肝限局転移患者における術前化学療法としてのPanitumumab + XELOX療法の有用性を検討した。
対象は切除不能な肝転移があり、他臓器に転移を認めない化学療法未施行の大腸癌患者 (ECOG PS 0-2) とし、術前化学療法としてPanitumumab + XELOX療法 [Panitumumab (9mg/kg、day1) 3週毎 + L-OHP (130mg/m2、day1) + Capecitabine (1,000mg/m2、1日2回、day1-14) 3週毎] を施行して、4サイクル毎に腫瘍縮小効果および切除の可能性を再評価した。
なお、「切除不能な肝転移」の定義は以下に示す。
・ | 肝転移数>3個、腫瘍占拠率>50%、対側の楔状切除を伴う肝葉切除を要する肝転移 |
・ | 切除すると隣接する2区域を残せない、または十分な脈管血流や胆管ドレナージを維持できない肝転移 |
2007年11月から2011年1月までにイタリアの医療機関6施設から49例が登録された。なお、2008年11月からは登録にKRAS statusが必要になった。KRAS statusは野生型35例、変異型5例、不明9例であった。その他の患者背景は、ECOG PS 0が34例 (69.4%)、PS 1が15例 (30.6%) であり、平均年齢は60.4歳、原発巣切除症例は28例 (57.1%)、追跡期間中央値は16.6ヵ月であった。
評価可能46例のうちCRは4.3% (2例)、PRは50% (23例)、SDは30.4% (14例) であり、奏効率は54.3%であった (表)。KRAS 野生型患者32例における奏効率は65.7% (CR 6.3%、PR 59.4%、SD 21.9%) であった。
また、治療開始後に「肝転移切除可能」と診断をされた患者数は、再評価1回目10例、再評価2回目5例であり、切除例は全てKRAS 野生型であった。
全対象におけるOS中央値は23.9ヵ月で、PFS中央値は11.5ヵ月であった。
サブグループ解析では、肝転移切除例のOS中央値は36.6ヵ月と、姑息的化学療法例の18.6ヵ月と比べて有意に延長した (p<0.001)。また、KRAS status による解析では、KRAS 野生型例のOS中央値は30.1ヵ月と、KRAS 変異例および不明例の15.3ヵ月と比べて有意に延長した (p<0.001) (図)。
なお、頻度の高い有害事象は消化器毒性、皮膚障害、全身症状および神経毒性であり、特に下痢は25例に認めた (grade 3以上:10例)。
今回の検討により、切除不能進行・再発大腸癌の肝限局転移例におけるfrontlineとしてのPanitumumab + XELOX併用療法の有用性が確認された。この併用療法により、高い腫瘍縮小効果が得られるとともに、登録症例の1/3の症例が切除可能と評価された。
注目すべき点としては、今回登録された大部分の症例では、塊状の肝転移を有していたにもかかわらず、2例にCRを認め、OS中央値は既報と比較しても遜色なかった。