The 35th ESMO Congress, Milan 2010

ESMO 2010

演題レポート Presentations

Abstract #LBA20
  大腸癌
転移性大腸癌に対する1st-lineとしてのFLOX (5-FU + Leucovorin + Oxaliplatin) 療法の継続/間欠投与およびCetuximabの併用を検討した無作為化比較第III相試験:NORDIC VII 試験

Randomized phase III study of 5-fluorouracil/ folinate/ oxaliplatin given continuously or intermittently with or without cetuximab, as first-line treatment metastatic colorectal cancer: The NORDIC VII study (NCT00145314)

K.M. Tveit, et al.

Cetuximabとの併用はOxaliplatinよりもIrinotecanが望ましい

加藤 健志 先生

 今回の結果からBRAF遺伝子の変異が強力な予後予測因子であることが確認されたが、KRAS遺伝子変異はCetuximabの効果予測因子になり得なかったわけではなく、本試験におけるKRAS遺伝子変異の解析対象が不十分であり、KRAS遺伝子変異型におけるCetuximabの予期せぬ効果も偶然によるものと考えられる。しかし、本試験でNordic FLOX療法に対するCetuximabの上乗せ効果を、KRAS遺伝子野生型の症例でも証明することができなかったのは事実である。これはFOLFOX/XELOX療法に対するCetuximabの上乗せ効果を検証したCOIN試験において、KRAS遺伝子野生型の症例でも上乗せ効果を証明することができなかったのと同様の結果である。
 この演題に対するディスカッサントであるDr. Sobreroは、過去の臨床試験の結果と今回の結果を考慮して、Cetuximabとの併用化学療法はBOND試験、EPIC試験、CRYSTAL試験で上乗せ効果が証明されているIrinotecanが望ましく、Oxaliplatin (L-OHP) との併用効果は今回の試験を含めてエビデンスが不確実であるとコメントしているが、このコメントに賛同するものである。

背景

 我々は以前、転移性大腸癌における1st-lineとしてのNordic FLOX (5-FU + Leucovorin + L-OHP) の有効性を報告した1)。しかしながら、Nordic FLOX療法に対するCetuximabの上乗せ効果は検証されておらず、Nordic FLOX間欠投与 + Cetuximab併用とNordic FLOXとの比較も検討されていない。

対象と方法

 2005年3月〜2007年10月までに、北欧5ヵ国 (スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランド) の32施設から571例の患者が登録され、1:1:1の割合で下記の3群に無作為に割り付けた。

  • A群 (FLOX) : 185例
  Nordic FLOX (L-OHP 85 mg/m2, day 1および5-FU bolus 500 mg/m2 + LV 60 mg/m2, day 1-2) を2週毎に投与
  • B群 (FLOX + Cetuximab) : 194例
    Nordic FLOXを2週毎に投与
    Cetuximab 250 mg/m2, day 1を毎週投与 (初回のみ400 mg/m2)
  • C群 (FLOX間欠投与 + Cetuximab維持療法) : 187例
    Nordic FLOX + Cetuximabを16週投与後、Cetuximabのみ継続。進行が確認されたらNordic FLOXを再導入

 一次エンドポイントはprogression-free survival (PFS)、二次エンドポイントはobjective overall survival (ORR)、二次治癒切除率、安全性、overall survival (OS)、QOLとした。


結果

 登録症例571例のうち、566例を対象にITT解析を行った。年齢中央値は61.8歳、WHO PSは0: 67%、1: 29%、2: 4%であった。
 有効性を表1に示した。PFS、ORR、OSのいずれもA-B群間に有意差は認められず、OSについてはA-C群間においても同様であった。

表1: 有効性

 KRAS遺伝子検査は498例 (88%)、BRAF遺伝子検査は457例 (81%)で実施された。KRAS変異型は39%、BRAF変異型は12%、BRAF変異型かつKRAS野生型は20%であった。
 BRAFstatus別にみると、PFSおよびOS、ORRのいずれにおいてもBRAF野生型が優れており、PFSおよびOSでは有意差が認められた (p<0.001)(表2)

表2: BRAF status別の有効性

 一方、KRAS遺伝子については変異の有無に関係なく、PFS (p=0.99)、OS (p=0.96) に有意な群間差は認められなかった。
 PFSについては、KRAS遺伝子野生型のB群 (Cetuximab併用) のほうがA群 (Nordic FLOX単独) に比べてやや劣る傾向にあったのに対し、KRAS遺伝子変異型のB群がA群よりも良好な傾向にあった (表3)

表3: KRAS status別の有効性

結論

 転移性大腸癌における1st-lineとしてのNordic FLOXに対するCetuximabの有意な上乗せ効果は認められなかった。さらに、Nordic FLOX間欠投与 + Cetuximab維持療法のPFSはNordic FLOX単独とほぼ同等であり、L-OHPとCetuximabの相性が不良であることが示唆された。
 また、バイオマーカーについては、BRAF変異が強力な予後予測因子であることが確認された。
 KRAS遺伝子変異はCetuximabの効果予測因子になり得なかった。しかしながら、本試験におけるKRAS遺伝子変異の解析対象は不十分であり、KRAS遺伝子変異型におけるCetuximabの予期せぬ効果も偶然によるものと考えられる。

Reference
1) Sørbye H, et al.: J Clin Oncol. 22(1): 31-38, 2004 [PubMed