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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2015年6月 シカゴ

背景と目的

 cStage IA/IBに対するリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下幽門側胃切除術 (LADG) の安全性については、第II相試験にて報告したとおりである1)。胃癌においてLADGを受ける患者は増加しているものの、開腹幽門側胃切除術 (ODG) と比較した無作為化試験は示されていない。今回はLADGとODGを比較した無作為化比較試験を非劣性のデザインで実施した。

対象と方法

 対象は、20~80歳、ECOG PS 0/1、BMI 30未満のcStage IA (T1N0) /IB (T1N1/T2N0) 胃癌患者であり、cStage IAに対してはD1郭清、cStage IBに対してはD2郭清を施行した。統計学的に920例のサンプルサイズと計算し、921例を登録した。なお、主要評価項目はOSとしていたが、OSが良好であったため登録終了後に無再発生存期間 (RFS) に変更した。副次評価項目はOS、LADG完遂率、開腹移行率、有害事象、短期的臨床結果、術後QOLであった。

結果

 登録された921例が、ODG群459例、LADG群462例に無作為に割り付けられた (図1)。

図1

 対象の年齢中央値はODG群64歳、LADG群63歳、cStageはODG群はIA 402例/IB 57例、LADG群はIA 401例/IB 60例/不明1例であった (表1)。

表1

 手術時間はODG群194分、LADG群278分であり、LADG群で有意に84分長かった (p<0.001)。一方、出血量はODG群115mL、LADG群38mLであり、LADG群のほうが有意に少なかった (p<0.001) (表2)。

表2

 有害事象については、grade 3/4の術中有害事象はいずれの群も認めなかった。術後有害事象は、ODG群でAST上昇が4.2%、ALT上昇が4.4%であったのに対し、LADG群ではAST上昇が12.5%、ALT上昇が11.8%に認めた (表3)。

表3

結論

 肝機能上昇には注意を要するが、短期間の臨床指標と安全性においてcStage IA/IB胃癌に対して腹腔鏡下手術は開腹手術に対して同等の安全性が確認された。2018年にRFSが示される予定であるが、非劣性が示せれば標準治療の1つとなると考えられる。

コメント

 cStage I胃癌における開腹手術に対する腹腔鏡下手術の非劣性を検証するJCOG試験の安全性に関する報告である。術後合併症の発生率は両群共に極めて低く、cStage I胃癌に対して腹腔鏡下手術は安全に実施可能であることが示された。同様の試験が韓国でも実施されており、やはり腹腔鏡と開腹で差が認められなかったが、合併症の発生率は遙かに高く、死亡例も認められた。今回の結果は我が国の手術レベルの高さを示唆するものと思われる。このような試験で問題となるcontaminationやnon-complianceも極めて少なく、臨床試験としての質も極めて高いものであった。後は、最終解析の生存のデータを待つばかりであるが、現時点でイベントは極めて少ない。主要評価項目をRFSに変更したので、統計学的に有意な結果が得られることを期待したい。

(レポート:川崎 健太 監修・コメント:寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Katai H, et al.: Gastric Cancer. 13(4): 238-244, 2010[PubMed

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