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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 VEGFR-2に対する完全ヒト型IgG1抗体薬であるRamucirumab (RAM) は、REGARD試験1)RAINBOW試験の2つの第III相試験により2nd-line治療以降での有効性が確認されている。今回、食道/胃食道接合部 (GEJ)/胃癌に対する1st-line治療としてのRAMの効果を検討するため、無作為化二重盲検第II相試験が行われた。

対象と方法

 対象は、ECOG PS 0/1で化学療法歴のない食道/GEJ/胃癌患者であり、フッ化ピリミジン系製剤もしくはプラチナ製剤による周術期補助療法後12ヵ月以内のPD例は除外された。原発部位 (食道/GEJ/胃) と転移性 / 局所進行を層別因子として、RAM群 (mFOLFOX6 + RAM 8mg/kg 14日毎) およびプラセボ群 (mFOLFOX6 + プラセボ) に1:1に無作為に割り付けられ、PDまたは忍容できない有害事象が発生するまで治療を継続した。

 主要評価項目はPFS、副次評価項目は奏効率、OS、安全性などであった。PFS中央値をRAM群8.1ヵ月、プラセボ群5.8ヵ月と仮定し (HR=0.714)、検出力80%、片側α=0.15で、166例 (125イベント) が必要とされた。

結果

 2011年4月~2012年8月の間に、米国47施設から168例が登録され、RAM群84例、プラセボ群84例が割り付けられた。ベースラインの患者背景は、RAM群では年齢中央値64.5歳とプラセボ群 (60歳) より高値であることを除いて、両群でバランスがとれていた。主占拠部位は食道が約半数 (RAM群46% vs. プラセボ群49%)、GEJは約3割 (31% vs. 27%)、胃は約2割 (23% vs. 24%) であった。

 主要評価項目であるPFSの中央値は、RAM群6.44ヵ月、プラセボ群6.74ヵ月であり、RAM併用による有意な延長は認められず (HR=0.98, 95% CI: 0.69-1.37)、OSも有意差は認められなかった (11.7ヵ月 vs. 11.5ヵ月, HR=1.08, 95% CI: 0.73-1.58)。

 奏効率は、RAM群45%、プラセボ群46%と両群で有意差を認めないものの、病勢コントロール率はRAM群で有意に高かった (85% vs. 67%, p=0.008)。

 治療中止理由については、病勢増悪がRAM群43%、プラセボ群69%、患者/担当医判断および有害事象による中止がそれぞれ48%、16%、死亡がそれぞれ1%、4%であった。治療サイクルは、RAM群 においてプラセボ群よりも少ない傾向であった。

 RAM群で特に留意すべき有害事象として、出血 (44%)、高血圧 (38%)などの頻度が高かった。

 PFSの探索的なサブグループ解析においては、大部分のサブグループでRAM群が良好な傾向であった。しかし、原発巣部位が胃/GEJではRAMの上乗せが認められたのに対し (HR=0.53, 95% CI: 0.29-0.97, p=0.036)、食道ではRAMの上乗せ効果を認めなかった (HR=1.10, 95% CI: 0.61-1.97, p=0.746)。

 原発部位別の治療サイクルは、食道ではRAM群と比較してプラセボ群で多い傾向にあったものの、胃/GEJではその傾向がみられなかった。

結論

 食道/GEJ/胃癌に対する1st-line治療としてのFOLFOX + RAM療法によるPFS、OSへの上乗せ効果は認められなかった。探索的な検討であるが、原発部位を胃/GEJに限定したサブグループ解析では、RAM併用によるPFS延長が示唆された。

コメント

 今回の試験では、食道癌、胃癌に対する1st-line治療としてのRAMの有用性は証明されなかった。しかし、対象症例の約半数が食道癌患者であり、食道癌患者において (全身状態の影響か) RAM群で治療コース数が少ない傾向を認め、これが治療効果に影響を与えている可能性が示唆されていた。

 サブグループ解析ではこれまでRAMの有効性が確認されている胃/GEJにおいて、有意にPFSの延長が認められており、このコホートのみで検討すべきであったと思われる。ディスカッサントは抗VEGF抗体薬とL-OHPとの相性の悪さを指摘していたが、大腸癌ではそのようなことは指摘されていないため、有効性が確認されなかった理由としては根拠に乏しい。胃癌に対する1st-lineでは分子標的薬はTrastuzumabしか承認されておらず、是非とも我が国を中心としたAsiaで有効性を検証して頂きたい。

(レポート:谷口 浩也 監修・コメント:寺島 雅典)

Reference
  1. 1) Fuchs CS, et al. Lancet. 383(9911): 31-39, 2014[PubMed
  2. 2) Wilke H, et al.: 2014 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #LBA7[学会レポート

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