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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

背景と目的

 欧米では進行直腸癌に対して術後の局所制御を目的として術前化学放射線療法が行われる。NSABP R-04試験は当初、直腸癌術前化学放射線療法における標準治療であったinfusional 5-FUに対して、経口薬であるCapecitabineの非劣性を証明することを目的として2004年7月に試験が開始されたが、その後、L-OHP併用の有用性の検証が追加され、2005年10月にinfusional 5-FU vs. Capecitabine、およびL-OHP併用による効果の違いを検討する2×2デザインとなった。今回はその最終解析の結果の報告である。

対象と方法

 対象は、肛門縁より12cm未満の直腸癌症例であり、以下の4群に無作為割付けされた (図1)。層別化因子は、性別、stage II/III、手術の種類 (肛門括約筋温存 または 腹会陰式直腸切断術) であった。

図1

 主要評価項目は3年局所制御率であり、副次評価項目は病理学的CR率、肛門括約筋温存術の人数、DFS (disease-free survival)、OS、QOL、毒性、効果・予後についての遺伝子的・病理的バイオマーカーであった。

 Infusional 5-FUに対するCapecitabineの効果として、0.86<HR<1.17、3年局所制御率において±2%以内と仮定した。また、L-OHP追加による優越性として、検出力80%におけるHR=0.59、3年局所制御率において4%以上の改善とした。

結果

 患者背景において各群に有意差を認めなかった (表1)

表1

 治療コンプライアンスは、5-FUが単独群90%、L-OHP併用群84%、Capecitabineが単独群97%、L-OHP併用群96%であり、L-OHPは5-FU使用群69%、Capecitabine使用群62%であった。また、放射線療法 (RT) は治療群ごとに96~98%であった。

 死亡率および有害事象の検討では、L-OHP併用により有害事象の増加を認めた (表2)

表2

 主要評価項目である3年局所制御率は、5-FU群11.2%に対してCapecitabine群11.8%であり、5-FUに対するCapecitabineの非劣性条件の範囲内であった (HR=1.00, 95% CI: 0.75-1.32, p=0.98)。L-OHP併用における3年局所制御率の検討は、L-OHP併用群11.2%に対して単独群12.1%であり、L-OHP併用による効果の増強は認められなかった (HR=0.94, 95% CI: 0.67-1.29, p=0.70) (図2)

図2

 病理学的CR率については、各群において有意差を認めなかった (図3)

図3

 OSの検討において、5年OSは5-FU群79.9%に対してCapecitabine群80.8%であり、5-FUに対するCapecitabineの非劣性条件の範囲内であった (HR=1.00, 95% CI: 0.74-1.19, p=0.61)。L-OHP併用における5年OSは、L-OHP併用群81.3%に対して単独群79.0%であり、L-OHP併用によるOSの改善は認められなかった (HR=0.94, 95% CI: 0.68-1.16, p=0.38) (図4)

図4

結論

 直腸癌の術前治療としてCapecitabine + RTは5-FU + RTと比較し、局所再発率、病理学的CR率、DFS、OSにおいて同等であった。L-OHPの併用は予後を改善せず、有害事象の増加がみられたため、直腸癌の術前治療においては適応とならない。

 以上の結果より、直腸癌術前補助化学療法としてCapecitabine + RTが標準治療として確立されると考えられる。なお、切除標本を使用した遺伝子学的検討が現在行われている。

コメント

 直腸癌の術前(化学)放射線療法については多くの臨床試験が行われている。その結果をみると、術前(化学)放射線療法には局所再発の抑制効果は認められるものの、いわゆるSwedish rectal cancer trial以外では全生存期間の延長効果はみられていない (座談会参照)。今年の米国臨床腫瘍学会年次総会では、直腸癌に対する術前化学放射線療法と術後補助化学療法の効果を検討した研究結果の報告が4題あった (下表)
 本研究では、直腸癌に対する術前化学放射線療法におけるCapecitabineの5-FUに対する非劣性と、両者に対するL-OHPの上乗せ効果が検討された。なお、本研究の第II相試験の結果はすでにpublishされている1)
 結果は、主要評価項目である3年局所制御率や副次評価項目であるOSについて、5-FU持続静注に対するCapecitabineの非劣性が証明された。副作用や薬剤投与の簡便性などを勘案し、5-FUの持続静脈内投与とCapecitabineのどちらかを選択してよいものと考えられる。

演題 標準治療 試験治療 setting 症例数 期待値
(3年DFS)
結果
(3年DFS)
標準治療 試験治療 標準治療 試験治療 HR p値
#3603 Capecitabine or 5-FU + RT L-OHP併用 術前 1,284     64.2%
(5年DFS)
69.2%
(5年DFS)
  0.34
#3500 5-FU + RT L-OHP併用 術前後 1,236 75% 82% 71.2% 75.9% 0.79 0.03
#3501 Capecitabine + RT L-OHP併用 術前後 898 65% 72% 74.5% 73.9% 1.04 0.78
#3502 FL L-OHP併用 ypStage II/IIIの術後 321 70% 78% 62.9% 71.6% 0.63 0.032

(レポート:中村 将人 監修・コメント:大村 健二)

Reference
  1. 1) Wong SJ, et al.: Int J Radiat Oncol Biol Phys. 82(4): 1367-1375, 2012 [PubMed

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