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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2014年6月 シカゴ

対象と方法

 少なくとも1レジメン以上を投与し不応 / 不耐であった、抗EGFR抗体薬投与歴のないBRAF V600変異陽性の切除不能進行・再発大腸癌を対象に、図1のstudy designで試験を進行中である。第Ib相部分では2剤併用群としてCetuximab (通常投与量) にEncorafenibを漸増し、用量制限毒性 (DLT) の発現により設定された2剤併用群の推奨用量で、さらにBYL719を併用する3剤併用群として用量を漸増して、第II相部分の推奨用量を決定する。

図1

結果

 有効性と安全性の評価が可能であったのは51例 (2剤併用群26例、3剤併用群25例) であった。DLTとしては2剤併用群で関節痛 (grade 3)、嘔吐 (grade 3)、QTc延長 (grade 3) が、3剤併用群で間質性肺炎 (grade 3)、クレアチニン上昇 (grade 4) がそれぞれ1例認められたが、全体に有害事象は軽度から中等度であった。また、頻度の高い有害事象は倦怠感、悪心、下痢などであった。

 第II相部分の推奨用量は、Encorafenib 250mg、BYL719 250mgに決定した。抗腫瘍効果の探索的検討では、2剤併用群で奏効率29.2%、病勢コントロール率79.2%、3剤併用群では奏効率30%、病勢コントロール率90%であった。

図2

図3

結論

 BRAF V600変異型大腸癌に対するBRAF阻害剤Encorafenib (LGX818) + Cetuximab ± PI3K阻害剤BYL719 (GSK212) 併用療法は忍容可能であり、抗腫瘍効果が示唆された。現在、第II相部分が進行中である。

対象と方法

 抗EGFR抗体薬投与歴のないBRAF V600変異陽性の切除不能進行・再発大腸癌を対象に、図1のstudy designで試験が進行中である。第I相部分では2剤併用群としてPanitumumab (通常投与量) とBRAF阻害剤Dabrafenib、3剤併用群としてさらにMEK阻害剤Trametinibを併用し、漸増、用量制限毒性 (DLT) により、併用療法時の投与量を決定する。

図1

結果

 現時点で有効性と安全性の評価が可能であったのは33例 (2剤併用群17例、3剤併用群16例) であり、DLTは認めず、頻度の高い有害事象は皮疹、発熱などであった。

 推奨用量はDabrafenib 150mg、Trametinib 2mgに決定した。なお、探索的な抗腫瘍効果の検討では、2剤併用群で15例中2例にPRが、3剤併用群で15例中5例にPR、1例にCRが認められた (図2)

図2

結論

 BRAF V600変異型大腸癌に対するBRAF阻害剤Dabrafenib + Panitumumab ± MEK阻害剤Trametinib併用療法は忍容可能であり、抗腫瘍効果が示唆された。今後、第II相部分が開始される予定である。

コメント

 治療抵抗性のBRAF V600変異型大腸癌に対するBRAF阻害剤の報告である。同様にBRAF 変異の認められているメラノーマではBRAF阻害剤の効果が認められており、我が国でも既に保険承認が得られている。メラノーマと比較して大腸癌ではBRAF阻害剤単独の効果は劣っており、MAPK経路の他の分子やPI3K経路を抑制することによって最終的な標的であるERKの活性を抑制することが可能となる。したがって、これらの臨床試験ではBRAF阻害剤に抗EGFR抗体薬とPI3K阻害剤 or MEK阻害剤の3剤を併用する治療法を開発し、その安全性と有効性が確認された。

 確かにこれらの治療法は忍容性があり、有効性も期待できそうであるが、そもそも大腸癌ではBRAF 変異を有する症例が10%以下であることや、分子標的治療薬を3剤併用することのコストの問題が挙げられる。BRAF 変異大腸癌細胞における効率の良いERK活性抑制に関する基礎的研究を含め、今後臨床試験で解決していくべき課題と思われた。

(レポート:谷口 浩也 監修・コメント:寺島 雅典)

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