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GI cancer-net 海外学会速報レポート 2013年6月 シカゴ

背景と目的

 KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌における2nd-line治療としてのFOLFIRI + Panitumumab (Pmab) の有効性は20050181試験において証明されているが1)、一方でKRAS タイプに関わらずBevacizumab (BV) beyond progression の有効性も報告された2)。本試験では、KRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌で1st-lineでBVが投与された症例における2nd-line治療としてのFOLFIRI + Pmab vs. FOLFIRI + BV (BBP) の有効性を無作為化第II相試験において検討した。

対象と方法

 対象は、1st-line治療としてL-OHPベースの化学療法 + BVを少なくとも4サイクル投与され、不応もしくは不耐と評価されたPS 0-1の切除不能進行・再発大腸癌患者であり、途中でプロトコールが改訂され、KRAS 野生型に限定された。その他、適格規準、除外規準は進行癌に対する臨床試験として標準的内容である。対象は、FOLFIRI + Pmab群 (Pmab群) とFOLFIRI + BV群 (BBP群) に無作為に割付された。

 主要評価項目はPFS (progression-free survival) であり、副次評価項目はOS (overall survival)、無増悪期間 (TTP)、奏効率 (RR)、有害事象、バイオマーカー評価である。なお、試験デザインは無作為化第II相試験 (BBPに対してPmabの有効性をスクリーニングするデザイン) であり、PFSにおいて100イベントが観察された時点で解析予定とされた。

結果

 182例が登録され、患者背景はPmab群で高齢者、大腸癌、転移臓器個数が2個以上の患者が多い傾向にあった。

表1

 PFSのHRは1.01 (95% CI: 0.68-1.50) であり、中央値はPmab群7.7ヵ月、BBP群9.2ヵ月、イベント数はそれぞれ53 (58%)、52 (57%)であった。

図1

 OSのHRは1.06 (95% CI: 0.75-1.49) であり、中央値はPmab群18.0ヵ月、BBP群21.4ヵ月、イベント数はそれぞれ66 (73%)、68 (75%)であった。

図2

 RRはPmab群32%、BBP群19%であった。

 なお、何らかの後治療を施行された症例はPmab群57%、BBP群75%であり、後治療の種類は抗EGFR抗体薬 (26% vs. 54%) および抗VEGF抗体薬 (20% vs. 24%) の使用頻度が高かった。

 Grade 3/4の有害事象の発現頻度はPmab群78%、BBP群65%であり、grade 5 (死亡) の発現頻度は各7%、7%であった。有害事象による治療中断例は、Pmab群29%、BBP群25%であった。

表2

結論

 1st-line治療としてL-OHPベースの化学療法 + BVの治療が施行されたKRAS 野生型の切除不能進行・再発大腸癌に対して、FOLFIRI + Pmab療法とFOLFIRI + BV療法は、PFS、OSにおいて大きな差は認めなかったが、RRは前者で良好であった。両群の安全性プロファイルは、これまでの報告と一致しており、有害事象による治療中断率は両群で同等であった。

コメント

 本報告内容は2013 Gastrointestinal Cancers Symposiumで報告されている3)。本試験は無作為化第II相選択デザインであり、検証試験ではない。2次治療における有望な大腸癌のKey molecular targetの推奨が目的となる。細胞障害性薬のレジメンは、大腸癌におけるゴールドスタンダードである1次治療FOLFOX療法、2次治療FOLFIRI療法であり、併用される分子標的薬が1次治療Bevacizumabの時に、2次治療はBBPとしてのBevacizumab継続併用とすべきか、20050181試験2) ですでに評価されているPanitumumab併用とすべきかの検討である。結果、PFS、OSに差は認められず、かつPFS、OSともに両群とも良好な結果であり、どちらの選択でも問題はない。現状は、それぞれのレジメンの特性を考慮し、患者背景に合わせた選択となる。今後、更なる検討が期待される。

(レポート:中島 貴子 監修・コメント:佐藤 温)

Reference
  1. 1) Sobrero AF, et al.: 2012 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #387
  2. 2) Arnold D, et al.: 2012 Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology®: abst #CRA3503
  3. 3) Hecht JR, et al.: 2013 Gastrointestinal Cancers Symposium: abst #454

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