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演題速報レポート

Colorectal Cancer
Abstract #3507
Stage II 結腸癌患者に対する術後補助化学療法における5-FU/LV療法へのOxaliplatinの上乗せ効果
The efficacy of oxaliplatin (Ox) when added to 5-fluorouracil/leucovorin (FU/L) in stage II colon cancer.
Gregory Yothers, et al.
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背景
 高リスク (穿孔・T4病変・検索リンパ節個数12個未満) ではないstage II結腸癌症例に対する術後補助化学療法におけるOxaliplatin (L-OHP) の上乗せの意義は明らかでない。そこでstage II結腸癌に対する補助化学療法としての5-FU/LV療法へのL-OHPの上乗せ効果を、非高リスク群 (LoR群) と高リスク群 (HiR群) のそれぞれについて検討した。
対象と方法
 対象はNSABP C-05 / C-06 / C-07 / C-08の4試験に登録されたstage II/III結腸癌患者とした。症例をstage、人種、年齢、性別、リンパ節検索個数、深達度、Bevacizumabの使用の有無および期間により調整した後に解析を行った。L-OHPの上乗せ効果は、OS (overall survival) およびDFS (disease-free survival)、TTR (time to recurrence) で検討した。
結果
 術後補助化学療法として5-FU/LV療法が施行されたのは4,883例であり、うち2,009 例はstage IIであった。また、5-FU/LV + L-OHP併用療法が行われたのは3,788 例であり、うち991例はstage IIであった。
 全体では、DFSおよびOSに関してL-OHPの有意な上乗せ効果が認められた。また、stageによるL-OHPの効果の違いも否定的であった (DFS: p=0.20; OS: p=0.38)。
 Stage III症例においてサブグループ解析を行ったところ、DFSおよびOSに関してL-OHPには有意な上乗せ効果が認められた。一方、stage II症例においてはHiR群、LoR群ともにL-OHPの上乗せ効果は証明されなかった。しかし、5年OS、5年DFSおよび5年TTRには、L-OHPの併用により両群で2.5〜5.2%の改善が認められた。
L-OHP HR by Risk Group
Observed 5 year Adjusted* Kaplan-Meier Estimates by Risk Group
 本研究には原病死 (癌死)、非癌死の両方が含まれており、特にstage IIでは非癌死の割合が高いことから (stage II / III: 47% / 20%)、これらの要因がstage IIのOSに関連したと考えられた。
結論
 Stage II結腸癌における術後補助化学療法では、有意ではないもののOSやDFSに関して5-FU/LV療法へのL-OHPの上乗せ効果が認められた。しかし、L-OHPの毒性を勘案すると、それに優るものではないとも考えられた。
コメント
 再発のリスクが高いstage II大腸癌における術後補助化学療法としての5-FU/LV療法にL-OHPを加えることによって、DFSとOSのいずれにも有意な改善はみられなかった。しかしdiscussantは、乳癌の術後補助化学療法を受ける患者においては、生存率が3%程度改善する事実は患者にとって有意義であることが示されていることに触れた。実際、生存者のなかで誰が術後補助化学療法の恩恵を受けたのかはわからない。したがって、当然のことながら術後補助化学療法を施行する必要がなかった症例を判別する術はない。たとえL-OHPの副作用が上乗せされても、最善を尽くされているのだと思うことによって患者の幸福感が増せば、QOLの改善がもたらされる。Cureをもたらす術後補助化学療法では、統計学的に有意でなくても医療の現場で意味をもつ数字もあるのではないだろうか。
 また、この発表で用いられた再発の高リスクの定義は我が国で受け入れられるものではない。対象患者の選択がより科学的に行われれば、高リスクstage II結腸癌の術後補助化学療法におけるL-OHPの併用効果が有意であると証明される可能性も残されている。
(レポート:岩本 慈能 監修・コメント:大村 健二)
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