Abstract #4503

進行あるいは転移を有する胆道癌(ABC)患者に対するgemcitabine+CDDP療法とgemcitabine単独療法の比較:無作為化多施設共同第III相試験(UK ABC-02試験)の結果

Gemcitabine with or without Cisplatin in patients with advanced or metastatic biliary tract cancer (ABC): Results of a multicentre, randomized phase III trial (the UK ABC-02 trial).


Juan W. Valle, et al.

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背景

これまでに、進行あるいは転移を有する胆道癌に対する標準的な化学療法は確立していない。我々は、進行あるいは転移を有する胆道癌を対象とした無作為化第II相試験(ABC-01試験)の結果として、gemcitabine(GEM)単独療法と比較してGEM+CDDP療法でRR、PFS、TTP、Disease control rateが向上することを報告したが、生存に寄与するかは不明であった(2006 Gastrointestinal Cancers Symposium Abstract #98)。UK ABC-02試験は、ABC-01試験を継続・発展させた過去最大規模の第III相無作為化試験である。

対象と方法

組織学的または細胞学的に診断された進行あるいは転移を有する胆道癌で、全身的治療歴のないPS 0-2の患者を対象とした。本試験には410例(年齢中央値:64歳)が登録され、そのうち86例はABC-01試験で登録された症例であった。これらを以下の2群に無作為に割り付けた。

  GEM単独群(n=206)
GEM 1,000 mg/m2を第1、8、15日目に投与。28日間を1サイクルとして6サイクル施行
   
GEM+CDDP群(n=204)
  GEM 1,000 mg/m2 とCDDP 25 mg/m2を第1、8日目に投与。21日間を1サイクルとして、8サイクル施行

一次エンドポイントはOS、二次エンドポイントはPFS、有害事象、QOL(EORTC QLQ C-30)とした。

結果

投与期間中央値は、GEM単独群が13.0週であるのに対し、GEM+CDDP群が19.7週と、有意に長かった(p=0.007)。治療中止の主な理由は、PD(GEM群:49例 vs. GEM+CDDP群: 26例)、死亡(26例 vs. 17例)、合併症(14例 vs. 6例)、毒性(11例 vs. 8例)などであった。
また、測定可能な病変を有する患者(GEM単独群の64%、GEM+CDDP群の73%)について、画像診断を行った。その結果、Disease control rate(CR+PR+SD)はGEM単独群とGEM+CDDP群で同等であった(71.2% vs. 79.1%; p=0.256)。
ITT解析では、GEM単独群に比べ、GEM+CDDP群のPFSが2ヵ月近く延長しており、有意差を認めた(6.5ヵ月 vs. 8.4ヵ月; HR 0.72、p=0.003)。また、OSの中央値も、GEM単独群に比べてGEM+CDDP群で有意に延長した(8.3ヵ月 vs. 11.7ヵ月; HR 0.70、p=0.002)。

ABC-02-Results: Overall Survival (ITT)

なお、Grade 3以上の全有害事象の発現率は、GEM単独群(65.5%)とGEM+CDDP群(64.2%)で同等であり、個々の有害事象に関しても有意差は認められなかった。

結論

以上より、GEM+CDDP療法は、有害事象発現率を高めることなく、進行あるいは転移を有する胆道癌のOSを延長することが証明された。GEM+CDDP療法は、進行あるいは転移を有する胆道癌に対する化学療法の新たな国際標準であることが示唆された。

コメント

集積が困難な切除不能胆道癌を対象として多数の症例登録を果たし、かつ明確な結果を得ることができたRCTの結果を報告した演題である。Discussantであるパリ大学 St. Antoine病院の Dr. Louvetは、GEM+CDDPでCDDP併用による毒性の上乗せが認められないことに疑問を投げかけていた。しかし、同時に切除不能胆道癌に対する新たな標準的化学療法が示されたとも述べていた。本研究の結果をもって、GEM+CDDPを切除不能胆道癌に対する化学療法として一般臨床の場で施行することに問題はないと思われる。
胆道癌に関しては、GEM+L-OHPや5-FU+CDDPなど、他にもプラチナ製剤を用いた2剤併用化学療法の第II相試験が施行されている。これらを含めて、今後は切除不能胆道癌に対する新たなレジメンの開発を試みる場合、GEM+CDDPをcontrol armとするべきであろう。

(コメント・監修:大村 健二)