昨年に引き続き、今年もASCOに参加させていただきました。この機会を与えて下さった関係者の皆様に深く感謝いたします。
4月にロサンゼルスで開催されたAACRに参加したばかりであったため、癌基礎研究会議のAACRと癌臨床研究会議のASCOの雰囲気の違いが感じられ、製薬会社の景気の良さを反映したのか(?)、ASCOはいわゆるバブリーでした(冗談ですが)。
近年、AACRにも臨床研究に近い発表が増加しており、逆にASCOでも分子生物学的手法により創薬された化合物に関する臨床医の活発な討論を聞き、トランスレーショナルスタディにおけるAACRとASCOの重なりを感じたことは、大変刺激になりました。
今年のASCOにおいては、何といっても、日本から発信されたJCOG9912試験が印象に残りました。切除不能または再発胃癌に対して、リファレンスアームである5-FU持続静注療法を基準として、CPT-11+CDDP併用療法の生存期間における優越性、TS-1単独療法の生存期間における非劣性などを検証した発表ですが、日本からの本格的なphase
III試験であることと、TS-1単独療法の標準療法としての可能性が示されたことに大変興奮しました。CDDP+CPT-11が優越性を示せなかったことが個人的には残念でしたが、これから行われるであろう、組織型や転移形式などに基づくサブセット解析を期待したいと思います。
毎年多数の抗癌剤が開発されており、消化器癌の標準療法を決定するため新規治療法のすべてにphase III試験を組むことは、これからは患者にも医師にも大変な労力になると思います。今後は無駄な臨床試験がなくなるように、試験デザインや試験システムに関する改善も行われなければなりません。
統計学的に有意差が証明された治療法でも、わずかな治療効果の改善では、あくまで論文上のデータでしかなく、臨床の現場における使用には躊躇すると思います。臨床医の経験という定性定量困難なものを、論理的に説得力を持ちながら癌治療に生かす方法はないかと考える毎日でした。
記事内容で取り上げた薬剤の効能・効果および用法・用量には、日本国内で承認されている内容と異なるものが、多分に含まれていますのでご注意ください。
臨床試験の今後の在り方を考える契機に
高石 官均 先生
慶應義塾大学医学部 包括先進医療センター
ASCO参加で癌治療に取り組む研究者が身近に
原 拓央 先生
厚生連高岡病院 外科
これまでの自分にとって、ASCOは臨床研究のたびに、また日常の臨床診療においても発表内容や新たな動向などで意識せざるを得ない対象でありながら、自身で参加した経験がないゆえに今ひとつ現実感や親近感を伴わずにみてしまうところがある存在でした。
しかし日常臨床として上部消化管、特に胃癌の診療に従事しているものにとって2007年は注目せざるを得ない年になりました。年初のASCO-GIにおける補助化学療法について発表されたACTS-GCの余韻が残る中、日本発の進行再発胃癌の第III相試験としてJCOG9912とSPIRITSの結果が明らかにされるからです。とりわけJCOG9912で一般臨床としては広く普及しているTS-1使用の担保となる結果が示されたことは極めて有意義に思われました。
また引き続きTS-1+CDDPが発表されましたが、こちらは自身で症例登録をしたこともあって試験当初からの経緯や個々の症例が思い起こされ、ASCOで発表されるような結果につながったことを素直にうれしく思いました。この2題がいずれもoralで発表され、ディスカッションでも概ね好意的な評価を受けていたことは、私のような一臨床家にとっても感慨深いものでした。
今回はこのような年にレポーターとして参加させていただくことができ、研究発表を目の当たりにして、熱意をもって癌診療に取り組む世界中の人々の存在を実感として意識できました。会場や座談会などで多くの見識ある先生と接する機会が得られたことや、自身の不勉強を痛感できたことも含めて大変貴重な経験をさせていただく至福の時間となりました。機会を与えていただいた先生方、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。この経験を今後の診療や研鑽によい形で生かしていきたいと思います。
日本の試験結果報告に感銘を受けたASCO 2007
佐瀬 善一郎 先生
福島県立医科大学医学部 第一外科
2007年6月2日より6月5日、シカゴにて開催されたASCOにレポーターとして参加させていただきました。ASCOへは初めての参加であり、その規模の大きさに感動をおぼえました。
今回のASCOで私が注目したのは進行胃癌に対する化学療法に関する日本からのstudyであります。JCOG9912、SPIRITS trialの発表を聞いて日本人であることの誇りを感じました。これが、標準療法を作っていくことなんだと非常に感銘をうけました。また、大腸癌に関しては抗体を併用した化学療法の発表が多数の発表がありました。今後は他の消化器癌に関しても同様のレジメンの臨床試験が行われていくものと思われ、その結果が期待されます。またFOLFOX、FOLFIRIに関する発表も多数あり、L-OHPの有害事象である末梢神経障害は治療終了4年後でも10%以上残存していたとの報告があり、今後、進行大腸結腸癌に対する補助化学療法の選択が重要になってくるものと思われました。
日本においては臨床試験はまだ歴史が浅く、参加施設も非常に限られている現状があります。私は現在福島に勤務しておりますが、地方の病院からも積極的に臨床試験へ参加していくことが、日本から世界へむけて発信していくことにつながるのではないかと思います。ASCOへの参加はとても良い刺激になりました。この機会を与えてくださった諸先生方、関係者の皆様に深く感謝するとともに、この経験を活かし、今後に役立てていきたいと思います。



