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私は25年ほど、オンコロジーの世界に身を置いています。特に、大腸癌治療においては、目を見張るようなスピードで進化を遂げるのを見てきました。我々は、ASCOなどの学術総会で発表された研究成果について、過去を振り返り、より広い視点からそれらの進歩を見て、理解する必要があります。ASCOでは、毎年膨大な量の情報が提供されますが、そのうち、いったいどれが本当に状況を一変させるような変化をもたらすのかを見きわめるのは難しいものです。しかし、例えば5年ごとであるとか、一定の期間で区切って振り返ってみると、治療法の劇的な変化がわかります。
近年、イギリスでも使用可能な分子標的治療薬が増えましたが、それに伴って、組織としての癌治療の提供方法も大きく変わるのではないかと思います。今後は、患者個人の腫瘍のタイプを特定する必要があります。そのためには、内科医、外科医、病理医など、治療に携わる人間が、個々の専門技能を最大限に活かすことがきわめて重要です。
座右の銘として一言でいうならば、“もしあなたが最善の治療を行いたいのであれば、自分の専門技能を高めるように努めるべきである”、といったところでしょうか。
ASCOでは毎回膨大な数の発表が行われますから、1つのトピックを選ぶのは難しいのですが、cetuximab投与におけるK-RAS wild typeとmutantに関する発表が大きな注目を集めていますね。
K-RASにはずっと興味をもっていたのですが、それは私の専門が大腸癌と乳癌で、初の生物製剤であるtrastuzumabの登場に立ち会ったことが関係しています。ご存知のように、trastuzumabは乳癌に対する分子標的治療薬で、HER-2の状態によって適応患者を選びます。trastuzumabを従来の乳癌化学療法に追加することで、実に多大な治療効果が得られるようになりました。trastuzumabは生存曲線の変化だけでなく、「target therapy」という治療のパラダイムシフトをもたらしたのです。
その後も数々の分子標的治療薬が登場しました。cetuximabは、大腸癌に対して実際に治療効果が得られた好例だと思いますが、治療のパラダイムシフトよりも生存曲線の変化を望むのであれば、多大な効果は得られないでしょう。
bevacizumabやcetuximabなどの分子標的治療薬は、本来患者を選択して使うべき薬剤だと思います。しかし、我々はすべての患者を効率的に治療しようとするあまり、一律に投与するという、分子標的治療薬登場前の状況に自ら逆戻りしてしまいました。今後、K-RAS測定を推奨するより信頼性の高いデータが増え、K-RAS測定によって適応患者を選択するようになれば、本当に重要なbenefitが見えてくると思います。大腸癌においても、いよいよ治療のパラダイムシフトが近づいているのではないでしょうか。
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